【導入事例】有限会社戸田商行

導入事例

化粧品、医薬品などの企業、
研究機関に導入。

有限会社戸田商行

高知県産の原材料を使った
エッセンシャルオイルで、
オリジナル商品や輸出など
多角的にビジネスを展開。

日本で唯一、専業で木毛(もくめん)を製造している有限会社戸田商行。創業以来、木毛一筋の企業が2021年にアロマオイル事業をスタート、オリジナル商品の製造やエッセンシャルオイルの輸出を行っています。事業を始めて3年近く、同社のアロマオイル事業は新たな価値を生み出しながら堅実な歩みを見せています。
MICILとアロマ減圧水蒸気蒸留装置100L型
オリジナル商品MICIL(左)とアロマ減圧水蒸気蒸留装置(右)


ヒノキのオイルに癒された感動がきっかけに。

“日本最後の木毛屋”と自ら称する戸田商行は1961年に創業。本社・工場は高知県土佐市にあります。木毛とは、木材を薄く細く削って作る緩衝材です。今ではウレタン等の緩衝材が多く使われていますが、かつては緩衝材といえば木毛だったそうです。一時は全国で木毛メーカーは120社ありましたが、現在専業メーカーは同社のみ。
木毛
左の機械で木毛を製造。柔らかく自然な風合いで見た目も美しい木毛(右)

 

木毛一筋で歩んできた企業が、なぜアロマオイル事業を始めたのか。その理由について代表取締役社長の戸田実知子氏に伺いました。 「私が経営に関わったのが2012年頃。当時は木毛の需要も減りつつあり、今一度魅力を市場にアピールしたいと思い、展示会に出展したり、商品開発をしたりして積極的に動いていました。その時から森林素材を使った商品が開発できないかと考えていました」。 ちょうどその時期にヒノキの葉のオイルと出会い感動したことが後の事業化につながります。 「当時は仕事と子育てでとても疲れていました。そんな時に高知県の大野見という所で採れたオイルを使ってみたところ、その香りにとても癒されました。その時の感動が原点になりました」。 いつかは自分たちのこだわりのつまったオイルを作りたいという想いはありましたが、事業化するには多くの設備投資が必要で、当時はすぐに始められる状況ではなかったそうです。ところがその後に転機が訪れます。
有限会社戸田商行 戸田実知子社長
有限会社戸田商行 戸田実知子社長

 

性能だけでなく、メーカーとしての姿勢も重視。

2020年に日本でもコロナが蔓延、その影響で企業も厳しい状況を強いられました。そのため経産省が中小事業者の支援を目的に事業再構築補助金という制度を設けます。戸田商行もこれに応募し認定を受けることができました。資金の目途がつき、アロマオイルの事業化が可能になりました。 オイルを抽出する蒸留装置については3社のメーカーを候補に挙げ慎重に選定、その結果、本村製作所の装置が選ばれました。理由について戸田社長は次のように語りました。 「選定で重視したのは、私たちのこだわりが反映できるオイルを作れるか、初めての事業なのでメンテナンスやサポート対応はどうかという点でした。本村製作所はそれらの点で満足のいくものでした。原材料の特徴に合わせた精度の高いオイルを抽出することができ、操作の取り回しも良く、清掃も簡単で良い印象を持ちました」。 また戸田社長は開発の思いや姿勢についても重視、2回も本村製作所に足を運びました。装置だけでなく、パートナーとして良い関係性が築けるかも大きな選定のポイントで、メーカーとしての矜持を感じることができたことも決め手になったとのことです。
ラクラクメンテナンス
蒸留装置は換気も十分な広い専用スペースに設置、操作も洗浄も一人で行える

 

文旦農家の課題を解消、海外へも輸出。

2021年12月に蒸留装置を導入。タイプは100L型ですが、原材料を入れるカゴの容量を通常の80Lから200Lへとカスタマイズしました。これは一度に多くのオイルを採油するためです。ちなみにヒノキの枝葉の場合、45gと大量の蒸留を行っています。
特注アロマカゴ
原材料に蒸気が万遍なく行きわたるよう籠の中に蒸気の吹き出し箇所を設置して工夫

 

こうして本格的に事業が始まり、2022年8月には同社のオリジナルブランドMICIL(ミシル)が誕生しました。高知県産のヒノキとスギの枝葉から作ったエッセンシャルオイルで、かつて戸田社長が感動した癒しの香りを表現することができました。2023年6月には文旦(ぶんたん)というかんきつ類もラインナップに加わります。
MICILシリーズ
MICILはヒノキ、スギ、そして新たに加わった文旦の3種類

 

この文旦は土佐市の名産品ですが、実は形の悪い、キズの付いたものは値崩れを防ぐために市場に出さず破棄していたそうです。それを知り、さらに市場価値の低いB品の文旦も併せて同社で買い取ってオイルを採油することに取り組みました。
オイル成分を含む部位は皮のみ。それを減圧で煮出し蒸留すると精度の高いオイルが摂れます。文旦の収穫時期は2,3月なのでこの時期に集中して採油します。2ヶ月間で約120バッチ(1バッチ=蒸留工程1回分)稼働させています。皮をむくのは障害のある方が働く就労継続支援A型事務所に依頼しました。さらに実の部分は搾汁してジュースなどに加工します。
捨てられるはずの文旦からオイルや果汁を作り出すことに成功し、文旦農家から喜ぶ声が上ったそうです。なお、文旦のエッセンシャルオイルはアメリカのオイル販売企業にも輸出しており、戸田商行のアロマオイル事業はB to CとB to B両面でビジネス展開しています。
文旦アロマオイル
文旦の皮はオイルに。果汁はジュース、アイスクリームに使用

 

ところで戸田社長は蒸留装置について興味深いことを語ってくれました。それは見た目の良さ。
「本村製作所の蒸留装置は、酸洗い仕上げでステンレスがピカピカと輝いていてきれいです。見た目というのはとても重要だと思っています。弊社には工場見学される方が多く、装置がきれいだと清潔感があり、良いイメージを持ってもらえることができます。導入して2年半ほど経ちますが今でもピカピカです」。
アロマ工房
戸田社長(右)とオイルの蒸留の運用を担当する製造部長細川氏(左)

 

木毛同様にアロマオイルでも、原料の見極めや品質への飽くなきこだわりは一貫しており、それが同社らしさを作っている気がしました。ただアロマオイルを作るのではなく、文旦のケースのように社会課題を解決し、SDGsにつながる新しい価値を生み出しているところに感銘を受けました。
高知県SDGs推進企業
高知県からSDGs推進企業として登録されている

 

■企業データ
有限会社戸田商行
所在地 高知県土佐市本村580番地
創業 1961年
事業 高級もくめん、緩衝材、梱包資材、アロマオイルの製造

有限会社戸田商行

 

コーポレートサイト
https://www.toda-shoko.com/  
MICIL(ミシル)公式サイト
https://micil.jp/